穂苅貞雄写真展「槍をめぐりて」
北アルプス槍ケ岳(3180メートル)を半世紀にわたり撮り続けている槍ケ岳山荘会長の穂苅貞雄さん=松本市県=の写真展。穂苅さんは写真集の出版時には東京などで写真展を開いてきたが、地元開催は初めて。「もう年なので今後は難しい。最後は地元で開きたいとずっと思っていた」と話している。
槍ケ岳は、父の三寿雄さんが建てた大槍小屋を訪れた7歳の時に初めて登った。1954(昭和29)年に山頂直下の肩の小屋(現槍ケ岳山荘)で働き始め、その翌年から、写真家でもあった父の仲間の影響で写真を始めた。
以来、子どものころから親しんだ槍ケ岳の撮影がライフワークとなった。厳冬期の燕岳(2763メートル)に登り、朝日に照らされる一瞬を待ったり、深夜に登った近くの山から星空に浮かぶ姿を撮影したり。ヘリコプターから空撮したこともあるが、「楽をして撮ると心が入らない」と自分の足で登ることにこだわり続けた。
険しい穂高連峰に連なり、先のとがった山頂がひときわ目立つ槍ケ岳は「孤高の山」だと表現する。10年ほど前から体力的に登ることが難しくなったが、今も望遠レンズを抱え、松本市郊外から、夕日に映える山頂や満月と重なった姿などを狙い続けている。写真展開幕の前日も撮りに出掛けたといい「生きている限り、ずっと槍を撮り続けたい」と話している。